なぜ、人は同じ行動を繰り返し続けてしまうのか――自己固定化という静かな停止点

行動学・人間理解(Human Insight)

※本記事は「整合性と行動の内部構造 — Human Insight Series」意味生成フェーズから連続する一編です。


意味が再現され続けるとき、起きる反転

意味が行動として自然に再現されるようになると、
最初は、そこに違和感はありません。

説明はいらず、
判断は速く、
迷いも少ない。

それは一見すると、
「整った状態」
「安定した状態」
に見えます。

しかし、この段階で
静かな反転が起き始めます。

行動が意味を表現しているのではなく、
行動そのものが、意味の証明として機能し始める。

——これが、自己固定化の入口です。

行動が「確認」になるとき

本来、意味は内側の参照枠にあります。

けれど、行動が安定し、
周囲との摩擦も減り、
結果が再現され続けると、

人は無意識にこうなります。

「この動きをしている自分」=「正しい自分」

行動は選択ではなく、
自己確認の装置へと変わる。

  • 動いているから大丈夫
  • 続いているから正しい
  • 止まらないから問題ない

ここではもう、
意味は問い直されません。

意味は
行動の反復によって“固定された前提”へと変わります。

循環が止まる瞬間は、静かである

自己固定化は、
行き詰まりとしては体感されません。

むしろ、

  • 安定している
  • 慣れている
  • 説明できる
  • 再現できる

という感覚で覆われます。

循環が止まるとは、
動かなくなることではありません。

「同じ動きが、同じ意味を再生し続ける状態」

——それが、止まっているということです。

変化がないのではなく、
変化が必要なくなったと錯覚できる状態

ここで、人は疑問を持たなくなります。

自己固定化がもたらすもの

このフェーズで起きているのは、

失敗でも
退行でも
停滞でもありません。

構造としては、
意味と行動の結びつきが、過度に安定した状態です。

  • 別の可能性が見えにくくなる
  • 新しい違和感が検出されにくくなる
  • 環境変化への感度が落ちる

それでも本人は、
「問題は起きていない」と感じている。

なぜなら、
行動は機能しているから。

——ここに、自己固定化の強度があります。

固定化は「間違い」ではない

自己固定化は、
避けるべきものではありません。

それは、
一度つくりあげた整合性が
きちんと機能している証拠でもある。

ただし、

固定されたままでは、
次の意味は生成されない。

循環を再び動かすためには、
まず、

「なぜ、これを繰り返しているのか」

ではなく、

「いつから、問いが消えたのか」

を見る必要があります。

意味が再び動き出すのは、
行動を変えたときではありません。

問いが、内側に戻ったときです。

▼ 次稿予告

固定化された行動と意味は、
どのようにして再び揺らぎ始めるのか。

次稿では、

・違和感が“問題”になる前の兆候
・循環を再起動させる微細なズレ
・問いが再発生する条件

を扱います。

——
次稿:循環再起動フェーズ(意味が再び動き出す地点)