行動の「少し手前」で起きていること —— 行動が始まる前の静かな層を観測する

行動学・人間理解(Human Insight)

本記事は Human Insight:観測フェーズ(行動外在化)シリーズ の一編です。
基礎となる概念は『行動が「自分の外側」に逃げていくとき —— 観測フェーズとしての自己理解』を参照してください。


行動の「実行」ではなく、「発生条件」を見つめる

行動を語るとき、私たちはしばしば

  • 行動できたか
  • 続けられたか
  • 生産性があったか

といった 「結果」側の指標 を基準に置きます。

しかし観測フェーズでは、評価よりも

行動が「発生するかどうか」が
どの地点で、すでに決まっているのか

という 発火条件の層 を見つめます。

行動が外在化しているとき、人は

  • 行動「そのもの」を扱っているのではなく
  • 行動に至る前段階の「条件」を満たすことだけで
  • すでにエネルギーを使い切っている

という構造になりやすい。

たとえば――

  • 机を整える
  • ツールを揃える
  • 情報を集める
  • 計画を整理する

これらは行動の準備に見えますが、

本当は「行動の手前で完結している行為」

として機能していることがあります。

ここで重要なのは

  • それが悪いことでも
  • 意志が弱いことでもない

ということ。

ただ、そこで力が消費されているというだけです。

「行動を始める前に」自分がやってしまうこと

観測フェーズの対象は

行動が始まる直前の
微細な心の動き・身体感覚・選択傾向

です。

たとえば次のような現象があります。

  • 少しだけ SNS を見る
  • もう一度だけ内容を整理する
  • 一旦、別の簡単な作業を挟む
  • 気持ちを整えてから始めようとする

これらは

行動を邪魔している「敵」ではなく
行動と接続する前に現れる 保護反応

として観測します。

行動が外在化しているとき、

  • 行動に触れる=「負荷に直面する」
  • まだ触れない=「自分を守る」

という二層構造になっている。

つまり、

行動を避けているのではなく
「触れるための距離を測っている」

とも言えます。

観測フェーズでは「修正しない」

多くの自己改善は

  • どう直すか
  • どう我慢するか
  • どう矯正するか

という方向に向かいます。

しかし観測フェーズでは

まだ「直さない」

ことを原則にします。

理由はシンプルで、

観測が不十分なまま修正すると
認知構造そのものを見失うから

です。

行動の背景には

  • 抵抗
  • 違和感
  • 負荷
  • 恐れ
  • 不全感

といった 名付けづらい身体的/概念的感覚 が存在します。

観測フェーズとは、

それらを
「悪いもの」として排除せず
まず そのまま配置し直す段階

と言えます。

まとめ

本稿で扱った論点を、次フェーズへの橋渡しとして整理すると――

  • 観測対象は「行動結果」ではなく「発生条件」
  • 行動の手前でエネルギーが消費されることがある
  • それは怠慢や弱さではなく「保護反応」
  • 観測フェーズではまだ「修正しない」
  • 抵抗や違和感も構造の一部として扱う

観測は、改善の前段階ではなく

「まだ触れられていない部分を
自分の内側に戻してくる作業」

として機能します。

次稿では、

  • 行動の外在化がどのように「意味づけ」と接続されるか
  • どの地点で自己像と絡み合うのか

という 内的解釈層 に焦点を移します。