動けなくなったのではない。「自分はこういう人だ」という定義が先に固まっただけだ

行動学・人間理解(Human Insight)

※本記事は「整合性と行動の内部構造 — Human Insight Series」循環フェーズ〜固定化フェーズの連続線上に位置する一編です。
基礎概念は Thought Design 側の「参照枠の自己内固定」「意味の閉路化」と接続しています。


行動が止まっているとき、
多くの人は
「怠けている」
「迷っている」
と自分を評価します。

けれど、よく観察すると
止まっているのは行動ではなく、

「私はこういう人間だ」という定義

のほうだった、というケースが少なくありません。

自己固定化の次に訪れるのは、
行動停止ではなく、自己像の硬直です。

自己像は「理解」ではなく「配置」として固まる

自己像が硬直するとき、
そこに強い自覚や決意は伴いません。

  • 納得したわけでもない
  • 選んだつもりもない
  • 守ろうと意識しているわけでもない

それでも、

「私はこういうタイプだから」
「これは私には向いていない」
「ここまでが限界」

といった自己定義が、
行動の前提条件として静かに常在化します。

ここで重要なのは、

👉 自己像は信念ではない
👉 思想でも性格でもない

行動が通過できる範囲として配置される
という点です。

行動が選択肢に上がらなくなる構造

自己像が硬直すると、
人は「やらない」わけではなく、

最初から選択肢に入れなくなります。

  • 考えもしない
  • 検討しない
  • 比較が起きない

これは意欲の欠如ではなく、
認知上の遮断です。

行動は、

意志 → 選択 → 実行

という直線ではなく、

「選択肢として浮上するかどうか」

の時点で、
すでに自己像によってふるいにかけられている。

硬直とは、
このふるいが固定化された状態です。

なぜ自己像は硬くなるのか

自己像硬直は、
多くの場合「失敗」や「諦め」から生じるものではありません。

むしろ、

  • 一度、整合性が取れた
  • しばらく安定していた
  • 摩擦が減った

という成功体験の延長線上で起こります。

自己固定化によって、

  • 無理が減り
  • 説明が不要になり
  • エネルギー消費が下がる

その状態が続くと、

「これが自分だ」

という定義が、
調整不能な前提として固着する。

自己像硬直は、
安定の副作用として発生します。

固定されるのは「能力」ではない

ここで誤解されやすいのは、

👉 硬直している=能力が低い
👉 可能性が閉じた

という理解です。

実際に固定されているのは、

  • 能力
  • 才能
  • 意欲

ではなく、

「それを使ってよい範囲の自己定義」

です。

だから、

能力はあるのに使われない
可能性はあるのに検討されない

という現象が生まれる。

自己像硬直は、
資源の枯渇ではなく、使用制限です。

硬直は壊すものではない

自己像硬直は、
敵でも問題でもありません。

それは、

  • 自己を守り
  • 過剰な摩擦を避け
  • 一度得た安定を保持する

ために成立した、合理的な配置です。

ただし、

循環を再開したい場合、
必要なのは

👉 自己像を壊すこと
👉 定義を否定すること

ではなく、

「行動が再び通過できる余白」をつくること

硬直は解除ではなく、
緩和によって変化します。

次稿予告

次稿では、

この自己像硬直が
どのようにして再び動的な状態へ戻るのか

・意味が再び循環し始める条件
・自己定義が揺らぐ瞬間
・意志ではなく配置が変わるプロセス

これを

👉 Human Insight(再可動化フェーズ)

として描写していきます。